手汗・足汗に塩化アルミニウム液が効かないのはなぜ?その原因を解説

酷い手汗で悩んでいる人の多くは、ネット上で手汗を止める方法や有効な手汗対策を色々と検索されていることと思います。
そして、多くのサイトが提案している方法の一つに、「塩化アルミニウム液」(略して塩アル)を使った手汗対策があります。

塩化アルミニウム液は、制汗作用がとても強く、「多汗症」の治療ガイドラインにおいて、第一選択肢とされるほど、その制汗効果が高いと評価されている薬剤です。
しかし、とても制汗効果が高い薬剤ではあるものの、「とても効果が高い!」という肯定的な意見だけでなく、「重度の手汗・足汗にはほとんど効かない!」という正反対の意見も散見されているのが実情かと思います。

なぜこのように塩化アルミニウム液に対し、意見や口コミ、評価が分かれてしまうのでしょうか?

筆者は幼少期より、重度の手汗・足汗の多汗症を患っています。(レベル2~3)
今まで様々な多汗症治療や対策を行ってきていますが、もちろん塩化アルミニウム液の治療についても、筆者自身、経験したことがある治療方法です。
筆者の場合は、塩化アルミニウム液の使用は、他のどの治療や制汗対策よりも、制汗の効果が高いと感じました。しかし、誤った使い方等をしてしまった場合は、当然ですが、塩化アルミニウム液の効果を全く感じられないなぁ…と思ったことがあるのも事実です。

そこで、筆者の経験談も交えつつ、手汗・足汗に対し、なぜ塩化アルミニウム液の効果がないと感じてしまうのか、まとめてみました。

塩化アルミニウム液の効果が感じられない5つの理由

まず、塩化アルミニウム液が手汗・足汗に効かないと感じられる理由としては、主に以下の5つの理由が考えられます。

  1. 使い方が誤っている
  2. 即効性を期待してしまっている
  3. 適切な塩アル濃度のものを使用していない
  4. 耐性ができてしまい、制汗効果が感じられなくなった
  5. 塩化アルミニウム液では、多汗症の「完治」ができないことを認識していない

それでは1つずつ、詳しい内容を見ていきましょう。

①使い方が誤っている

塩化アルミニウム液での汗対策において、「効果がない!」と思われる1番の理由は、使い方が誤っている場合です。

まず、塩化アルミニウム液でどのように汗が止まるかを簡単に説明すると、多汗症で悩んでいる部位(手の平や足の裏等)に直接塗り込むことで、汗の出口(汗腺)に物理的にフタを作って、汗が出てこないようにする、という治療方法です。

このため、塩化アルミニウム液を皮膚と反応させやすくするには、

  1. 清潔な皮膚に塗り込む必要がある
  2. 塩化アルミニウム自体を汗で流れ落ちないようにする

ということが重要になってきます。

よくありがちな、誤った使用方法

ここからは、筆者の経験談をもとに、よくありがちな、誤った塩アルの使用方法をご紹介します。

化粧水や乳液のついた手で塗り込む

清潔な状態で塩化アルミニウム液は使わないと効果がないという点から、お風呂上りに使用するケースが多いと思います。お風呂上りに使用すること自体は間違いではありませんが、お風呂上りには、化粧水や乳液等を使用する方も多いと思います。

ここでありがちなポイントとしては、化粧水や乳液を使った手の平で、そのまま塩化アルミニウム液を塗り込んでしまうことです。
化粧水や乳液も、肌に塗り込んでしばらく経つと、自然とベタつき感などは消えていくものが多いと思います。この化粧水・乳液を吸収した手の平で塩化アルミニウム液をさらに使用してしまうと、効果が半減どころか、全く制汗効果が感じられないというケースが出てくるのです。

筆者の経験談になりますが、乳液やクリーム系の保湿をした後に、30分ほど時間を空け、塩化アルミニウム液を塗り込み就寝したとしても、やはり全くと言っていいほど、制汗効果が感じることは出来ませんでした。

kanako

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化粧水や乳液を使用してから、塩化アルミニウム液を使用する場合は、十分に手を洗い流してから使用をしないと、期待する制汗効果が感じられませんので、ご注意下さい。
就寝前に使用していない

塩化アルミニウム液を皮膚と反応させやすくするためには、汗をかいていない状態で塗り込むことが必須となってきます。汗をかいてしまうと、どうしても汗により塩化アルミニウム液が流れ落ちてしまい、うまく汗腺(汗の出口)にフタを作ることができないからです。

多汗症の特徴のひとつに、就寝中は多汗症を発症している部位からは多量の汗が発汗しない場合が多いという結果が、研究により分かっています。

また、就寝前の時間帯は、1日のうちでも特にリラックスをしている時間帯です。「汗をかけ!」と命令を出している交感神経も、他の時間帯に比べると過敏に反応しずらくなる時間で、汗をかかずに済むリラックスタイムなのです。塩化アルミニウム液を塗り込むには、正に絶好のチャンスタイムと言えます。
このため塩化アルミニウム液は、就寝前に塗り込むことが一番効果が表れやすいため、就寝前の使用が鉄則と言われています

しかし、反対に言えば、この就寝前に塗り込まない場合は、効果が感じられにくい可能性があります。

筆者の経験談になりますが、就寝前ではなく、朝出かける前に塩化アルミニウム液を使用したことがあります。使用した際は汗をかいていませんでしたが、しばらく時間が経つと何かのきっかけで汗のスイッチが入ってしまい、結局ハンドタオルで汗を拭きとることになってしまいました。当然ですが、塗布してからあまり時間が経たない内に、タオルで拭ってしまったこともあり、制汗効果は全くないといえる状態になってしまいました。

kanako

kanako
朝に塩アルを塗るのは原則やめて、就寝前に塗り込むようにしましょう!

②即効性を期待してしまっている

酷い手汗や足汗で悩んでいる場合、早く汗を止めたい!と思うのは自然なことです。
しかし筆者の経験上、多汗症の異常な発汗を止める方法に、使ってすぐに効果が表れるような即効性がある方法には出会ったことがありません。(※ETS手術を除く)

繰り返しになりますが、塩化アルミニウム液は、汗が出てくる患部に直接塗り込み、汗の出口(汗腺)にフタを作って、汗が出てこないようにする治療方法です。
この汗の出口にフタが作られる期間は個人差がありますが、数日~1週間程度は継続利用をしないとフタがきちんとされず、手汗や足汗の制汗効果が感じられません。
塩化アルミニウム液を入手後、すぐに使用して手汗・足汗にが止まるような即効性があるわけではないのです。少なくとも数日間使い続けることが必要になります。
少し根気がいる方法ですが、一度汗が止まるまでは、必ず根気強く使い続けることをおすすめします。

筆者の場合ですが、やはり初めて使用した際は、効果的な塩化アルミニウム液の塗り方等もしていなかったこともあり、塗布後の感想は、「期待していたほどの制汗効果は感じられなかった…」と期待外れに思ったことを覚えています。しかし、汗が止まるまでは数日間使い続けるように、という医師の説明があったため、真面目に使い続けました。

塩化アルミニウム液の使用し続けていくうちに、自分でも実感できるほど制汗効果が出てきていることに気が付きました。昨日よりも今日の方が、確実に手や足に汗をかいている回数や発汗量が少なくなっていることを体験出来たのです。

kanako

kanako
塩アルによって完全に汗が止まるようになってから数日間は、本当に汗がピタッと止まり、「塩化アルミニウム液って凄い!」と思った記憶があり、とても感動しました!

塩化アルミニウム液は、しばらく継続利用を続けて初めて制汗効果が認められる治療方法です。1~2回程度の使用だけで「効果がない」と決めつけないようにしましょう。

③適切な塩アル濃度のものを使用していない

塩化アルミニウム液は、一般的に水溶液の濃度が高い方が制汗効果が高いと言われています。このため、重度の多汗症を患う方の場合は、高濃度(20%前後)のものを使用しないと、制汗効果は感じずらいと言われています。

多汗症の重症度判定

まずは、あなたの多汗症で悩む部位の発汗量がどの程度のレベルにあたるのか、セルフチェックを行ってみましょう。

日本皮膚科学会が発表している、多汗症診療ガイドラインより、自覚症状により、以下の4つのレベルで重症度が分類がされています。

  1. 発汗は全く気にならず,日常生活に全く支障がない
  2. 発汗は我慢できるが,日常生活に時々支障がある
  3. 発汗はほとんど我慢できず,日常生活に頻繁に支障がある
  4. 発汗は我慢できず,日常生活に常に支障がある

③・④に当てはまる場合を「重症」の指標としています。

また、手汗に関しては、更に以下のように重症度の分類がされています。

<手汗レベル>

  • レベル1 手が湿っている。触ると汗ばんでいることがわかる。
  • レベル2 手に水滴ができる。見ただけで汗をかいていることがわかる。
  • レベル3 手から水滴がしたたり落ちる。

レベル2~3に該当する場合、「重症」の指標になるようです。
筆者の場合は、病院でも診断されましたが、レベル2~3に該当します。

kanako

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筆者自身、重度の多汗症であるため、塩化アルミニウム液は、濃度20%程度のものを使用しない限り、制汗効果はあまり感じられませんでした。

濃度20%の塩化アルミニウム液の入手方法

専門病院で処方される塩化アルミニウム液の水溶液濃度は、10~20%ほどのものが多く、重度の多汗症であれば、濃度の高いものを処方されるでしょう。
あいにく塩化アルミニウム液は保険適用外の薬剤ではありますが、100ml、1000円前後で処方してくれる病院が多いため、そこまで高額な治療費にはなりません。

専門病院での処方以外だと、ネット通販で塩化アルミニウム液を購入することができますが、その際は海外の商品でないと、塩化アルミニウム20%濃度の商品は購入できません。
日本の製薬メーカーから出ている一番高濃度の塩化アルミニウム液配合商品は、日邦薬品が販売している『オドレミン』という商品になります。ただし、オドレミンは塩アル濃度は13%のため、重度の手汗・足汗で悩んでいる場合だと、オドレミンを使用してもあまり期待するほどの制汗効果は得られないでしょう。

ちなみに、海外商品になりますが、塩化アルミニウム20%配合の商品はこちらになります。

デトランスα  ワキ用/手足用塩化アルミニウム濃度:20%
25ml:初回2900円
医療先進国デンマーク発の制汗剤。
塩化アルミニウム濃度は20%と高く、海外製品のため日本の薬事法での規定値を超える高配合。販売実績75万個、多くの汗の悩みを抱える人々に支持されています。
ワキ用を買う 手足用を買う
※ネット通販専用商品

値段は2900円と少々割高感は否めませんが、専門病院での受診をした場合も、初診料や診察料、薬の処方代、病院までの交通費など考えると同じ程度の金額になると思いますので、時間がなかったり、近くに専門病院がないような場合は、デトランスαを利用してみることをオススメします。

④耐性ができてしまい、制汗効果が感じられなくなった

最初は塩化アルミニウム液での制汗効果が感じられていたのに、いつの間にか効かなくなってしまった場合、高頻度で塩化アルミニウム液を使い続けたために、次第に塩化アルミニウム液に対し『耐性』ができてしまい、効果が表れにくくなってしまった可能性があります。

この現象は、塩化アルミニウム液に限った話ではなく、他の薬でも見られます。(鎮痛剤等)反復して繰り返し投与することにより、身体に『耐性』が作られてしまうと、徐々に効果が減弱し、最終的にはほとんど効かなくなってしまう場合があります。

もし、あなたが高頻度で塩化アルミニウム液を使い続けいていた事実がある場合は、恐らく耐性が出来てしまったことが原因でしょう。
しばらくの期間は塩化アルミニウム液の使用は中止し、体に塩化アルミニウム液の効果を忘れさせてから、新たに使い始めるしか方法がなくなってしまいます。

耐性を付けさせないためにも、塩化アルミニウム液を使用し、汗が止まったと効果が実感できた場合は、必ず塩化アルミニウム液の使用を一旦中止しましょう。
一度汗腺にフタがされると、しばらくの間は制汗作用は持続します。
どれぐらい効果が持続するかは人それぞれで、5日~10日間程度と言われています。
まず最初に自分はどれぐらい効果が持続するのかを把握し、その後はその有効期限を目安にして、効果が切れる少し前に、塩化アルミニウム液を再度塗布(1~2回)し、効果を継続させていきましょう。

⑤塩アルでは「完治」ができないことを認識していない

多汗症の治療には、大きく分けて、次の2種類の治療法があります。

  1. 症状緩和(症状改善)のための治療方法
  2. 症状完治のための治療方法

残念ながら、塩化アルミニウム液を使用した治療法は、②の多汗症の完治を目指す治療方法ではなく、①の症状緩和(症状改善)のための治療方法となります。
あくまで「汗の出口にフタをする」という物理的に汗を一定期間止める治療法になるため、根本から多汗症を完治させるという治療ではありません。
このため、一定期間を過ぎてしまうと、また自然と汗が戻ってきてしまうため、継続的に塩化アルミニウム液を使用し続けないといけません。

人によっては、すぐに汗が戻ってしまうことから、塩化アルミニウム液を使用しても効果がない、と考えてしまうのではないかと思います。

多汗症で苦しむ人であれば誰でも、症状完治のための治療をしたいと考えると思います。しかし、多汗症を完治させる治療というのは、現在の医療では、ETS手術(発汗指示を出している交感神経自体を遮断する内視鏡外科手術)以外の方法はありません。

ETS手術以外の治療法は、塩化アルミニウム液での治療も含め、現在すべて①の症状緩和の治療になります。塩化アルミニウム液以外の代表的な治療法だと、

  • イオントフォレーシス療法(微弱な電流を流す治療法)
  • ボトックス注射(ボツリヌス毒素療法)
  • プロバンサイン(内服薬)

上記のものが選択肢として挙げられると思います。
しかしこれらは、塩化アルミニウム液での治療と同様、汗が止まる(減少する)期間は限定的であり、治療をストップしてしまうと、汗がまた戻ってきてしまう治療法になります。

効果的な塩化アルミニウム液の塗り方とは?

重度の多汗症を患う筆者ですが、多汗症の汗の発汗を抑える方法として、個人的な見解ではありますが、塩化アルミニウム液での治療方法が、断トツで効果が高いと感じています。

効果の程は確かに個人差があるのは分かるものの、「全く効果がない」というネットの口コミ等をみると、どうしてだろう?と疑問に感じてしまうことが多々あります。

そこで、塩アル治療を検討されている方、または塩アル治療をしているがうまく効果が実感できない方に向け、筆者自身がどのような方法で塩化アルミニウム液を使い、制汗効果を感じているかをご紹介したいと思います。

私が塩化アルミニウム液を使用する際は、必ず下記の内容通りに実践しています。

  1. 必ず就寝前に塩化アルミニウム液を使用すること
  2. 清潔な手の平・足の裏に塗り込むこと
  3. 薬液はたっぷりと塗り込む
  4. ドライヤーの冷風などで薬剤を乾かしながら、2度漬けを行う
  5. ゴム手袋やラップを使い、患部を密閉させる

より具体的な詳細は、こちらの記事にまとめてありますので、効果的な塗り方を知りたい方は、是非ご確認ください。

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汗と上手に付き合って、生活の質をあげていきましょう

酷い手汗や足汗で悩んでいる方は、きっと自分の体質を嫌い、他の人と比べ、悲観している人が多いと思います。
筆者自身も、同じように自分の体質が大嫌いで、やりきれない憤りのようなものを感じていました。

しかし、どんなに自分の体質に悲観したとしても、多汗症の症状をリスクなく、今すぐ劇的に改善する方法は、残念ながら現在の医療を持ってしても見つかっていません。

手汗を止めたい!何とかしたい!と思う気持ちは十分にわかります。
手汗を完全に止めることができるETS手術(神経を切って汗を根本的に出なくする手術)を知った人は、「私にはもう手術しかない!」と思い詰めてしまう気持ちも分かります。
しかしETS手術は、代償性発汗など、あまりにリスクが高い治療方法のため、ETS手術も安易に選択ができるものではありませんよね。

そこで、私が伝えたいことは、「汗と上手に付き合って、生活の質をあげていく」ことです。手汗や足汗を完全に止めることは難しくても、塩化アルミニウム液などを効果的に使用していくことで、汗の発汗量を今より軽減したり、また不快感を和らげることは十分に可能です。私たちが嫌っている、この汗と上手に付き合うことができれば、きっと今あなたが抱えているストレスは大きく減らすことができるのではないでしょうか。

「塩化アルミニウム液なんて効かないじゃん!」と諦めるのではなく、どうすれば自分自身にとって、一番効果的な使い方ができるのか、一度冷静に考えてみてはいかがでしょうか?

私の執筆した記事が、同じように多汗症で悩んでいる方の助けになれば幸いです。

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